経済学者・宇沢弘文が提唱した、社会的共通資本という考え方。

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社会的共通資本とは、日本の経済学者であった宇沢弘文さん(1928-2014年)が提唱した概念です。

岩波新書から、『社会的共通資本』が出版されていますが、僕が今回読んだのは宇沢さんの著書『経済学と人間の心』です。

社会的共通資本について、少し難しい言葉もありますが、説明している箇所があったので紹介します。

単なる「社会資本」を超えた意味合いをもつ、社会的共通資本

以下、『経済学と人間の心』からの引用です。興味がある方は、少し長いですが読んでみてください。

社会的共通資本は、一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような自然環境と社会的装置を意味する。社会的共通資本は、一人ひとりの人間的尊厳を守り、魂の自立を支え、市民の基本的権利を最大限に維持するために、不可欠な役割をはたすものである。社会的共通資本はたとえ、私有ないしは私的管理が認められているような希少資源から構成されていたとしても、社会全体にとって共通の財産として、社会的な基準にしたがって管理・運営される。社会的共通資本はこのような意味で純粋な意味における私的な資本ないしは希少資源と対置されるが、その具体的な構成は先験的あるいは論理的基準にしたがって決められるものではなく、あくまでも、それぞれの国ないし地域の自然的、歴史的、文化的、社会的、経済的、技術的諸要因に依存して、政治的なプロセスを経て決められるようなものである。

社会的共通資本はいいかえれば、分権的市場経済制度が円滑に機能し、実質的所得分配が安定的となるような制度的諸条件であるといってもよい。ヴェブレンの制度主義の思想的根拠は、これもまたアメリカの生んだ偉大な哲学者ジョン・デューイのリベラリズムの思想にある。したがって社会的共通資本は決して国家の統治機構の一部として官僚的に管理されたり、また利潤追求の対象として市場的な条件によって左右されてはならない。社会的共通資本の各部門は、職業的専門家によって、専門的知見に基づく、職業的規範にしたがって管理・維持されなければならない。

社会的共通資本は自然環境、社会的インフラストラクチャー、制度資本の三つの大きな範疇にわけて考えることができる。自然環境は、大気、水、森林、河川、湖沼、海洋、沿岸湿地帯、土壌などである。社会的インフラストラクチャーは、道路、交通機関、上下水道、電気・ガスなど、普通の社会資本とよばれているものである。社会資本というとき、その土木工学的側面が強調されすぎるので、ここではあえて、社会的インフラストラクチャーということにしたい。制度資本は、教育、医療、金融、司法、行政などの制度をひろい意味での資本と考えようとするものである。

もっとも、この分類は必ずしも、網羅的ではなく、また排他的でもない。社会的共通資本は何かということを、分かりやすく説明したものにすぎない。自然環境、社会的インフラストラクチャーについては説明の必要はないであろうが、制度資本の考え方は、必ずしも一般的ではないと思う。制度資本は、社会的共通資本の機能、役割を考えるとき、重要な意味をもつ。そのなかで、とくに大切なのは教育と医療である。

教育は、一人ひとりの子どもたちがそれぞれもっている先天的、後天的能力、資質をできるだけ育て、伸ばし、個性ゆたかな一人の人間として成長することを助けようとするものである。他方、医療は、病気や怪我によって、正常な機能を果たすことができなくなった人々に対して、医学的な知見にもとづいて、診察、治療をおこなうものである。どちらも、一人ひとりの市民が、人間的尊厳を保ち、市民的自由を最大限に享受できるような社会を安定的に維持するために必要、不可欠なものである。人間が人間らしい生活を営むために、重要な役割をはたすもので、決して、市場的基準によって支配されてはならないし、また、官僚的基準によって管理されてはならない。

「社会的共通資本」というとらえ方を、宇沢さんの本を読むまで知りませんでした。

社会的共通資本の管理の仕方であったり、社会的共通資本同士の繋がりなど、様々な視点から深く考えてみるのも面白いのではないでしょうか。

最後に

今回は、『経済学と人間の心』を読みましたが、『社会的共通資本』も読んでみようと思います。

Youtubeにて、TPPと、社会的共通資本の関係について宇沢さんが語っている動画があるので、お時間ある方は是非見てみてください。

リンク:TPPは「社会的共通資本」を破壊する

それではまた!

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