貧困から抜け出せないリキシャドライバーがチェンジメーカーとして変革を起こす。クマールサルム博士とリキシャ銀行。

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プレディープ・クマール・サルム博士は、インドのクワハティ市に拠点を置く、非営利組織<地域開発センター>の事務局長です。

かつては獣医をしていたが、現在は三輪の人力車、いわゆるリキシャを引いて生計を立てる何千もの人々を支援しています

今回は、彼が起こしたリキシャ革命を紹介したいと思います。

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貧困から抜け出せないリキシャ引きの人々

彼によると、インドには800〜1000万人のリキシャドライバーがいます。

リキシャドライバーの多くは、良い仕事と生活を手に入れようと故郷を離れて都会にやってきます。しかし、教育をほとんど受けていない地方出身者は仕事を見つけることが難しく、持っているお金はすぐにそこをついてしまいます。

そこに目をつけたのが、何千というリキシャを所有し、何千ルピーもの貸し賃を日々手にするマフィア達です。

マフィアからリキシャ引きの仕事を紹介された人は、毎日生活するのに必要なお金を稼ぐことができますが、それはギリギリ生きていけるかという額です。

彼らは怠惰であるという訳ではまったくありません。彼らは週7日間、1日平均8〜10時間自分の体を資本に働きます。しかも、住む場所がないので、夜はたいてい路上で寝るので、警察などから度々嫌がらせをうけ、睡眠もままなりません。

人間誰しもそんな過酷な生活からなんとか逃れたいと思うはずです。そんな苦しさを紛らわすために彼らは麻薬やアルコールに手を出すようになります。一度そこにハマってしまうと、その先には依存症しかなく、お金を貯めることも、故郷に帰ることもできなくなります。

結果としてそんな悪循環から抜け出すことが出来なくなり、肉体も、精神も、夢も永遠に潰されてしまうのです。

彼らの現状を変え、人生を変えるアイデア

リキシャドライバーの多くは、自分のリキシャが持てないがためにリキシャを借りています。しかし、マフィアに収めていた借り賃を足していくと、約一年でリキシャの持ち主になれる計算でした。

それに気がついたプレディープ博士は、「車ならローンを組めるのに、どうしてリキシャドライバーは融資を受けてリキシャを所有できないのか」という疑問を抱きました。

博士はその後の調査を行い、リキシャドライバーの困窮を知りました。そしてすぐに彼は様々な団体に資金援助を求めましたが、どれも却下されてしまいます。

当時大学で機関紙の発行に携わっていた博士は、その収入源が企業からの広告収入であることに注目し、そこで思いついたのが、リキシャの後ろに広告を掲載することでドライバーにとって追加収入を得る手段になるかもしれないということでした。

博士は、また、インド工科大学のデザイン学部と交流を持ち、ペダルを漕ぐときの負担を減らし、ドライバーの使いやすさを重視したリキシャを考案しました。

さらに、博士の頭のなかには、購入権つきのリキシャ貸与、いわゆるリキシャ銀行の構想を描いていました。

結果的には、インドの大企業3社からリキシャ100台分の広告掲載費を提供してもらうことに成功し、2004年にリキシャ銀行設立が現実のものとなりました。

リキシャ銀行 概要 Rickshaw Bank in India

リキシャ銀行の狙い

リキシャ銀行は技術、財務、社会の3つの柱から成り立っています。この3つが一体となることで、ビジネス的な性格と社会的な性格の両方が備わり、うまく調和した変革が可能になります。

技術面では、いかにリキシャドライバーの重労働を軽減するかという点です。リキシャは一世紀もの間ほとんど改良されることはありませんでしたが、新型のリキシャは倒れにくい構造で、なおかつ、40%もの軽量化に成功しました。また、床が低く、高齢者や子供、サリーを着た女性でも乗り降りがしやすい構造になりました。

運営における財務面では、リキシャ銀行の試験事業に関わった4つの商業銀行が支援を申し出ました。そのなかの一行からは、活動に参加しているドライバー達がそれぞれの名義で銀行口座を開設できるようにと協力を申し出があり、インドの歴史の中でリキシャドライバーが銀行を利用できるようになった初めての例となりました。

自分の銀行口座を持てることは当人にとっては、とてつもなくおおきな自信につながります

経済的な面では、ドライバーに対してさまざまなメリットがあります。まず、ドライバーにリキシャが渡され、その返済がスタートします。彼らは借り賃を納めていた時と以前と同じように、一日あたり、24〜40ルピーを支払うが、これは返済のためのお金であり、借り賃ではありません。

そして重要なのは、この日々の支払には、リキシャ、保険料(損害保険、生命保険など)、ユニフォーム、写真付きの身分証明書などの費用のすべてが含まれていることです。そうすることでリキシャ銀行は、ドライバーから集めた返済金を銀行に支払うのです。

社会的な観点から見ると、ドライバーは身分証明書を持っていれば、警察から嫌がらせを受けなくて済み、損害保険だけでなく、健康保険にも加入できるようになったため、より少ない負担で病院で治療を受けられるようになります。

彼らにとってリキシャ銀行は、参加することで誇りを感じられるような、ゆるやかな組合のような存在になりました。

博士自身の新たなビジョン

リキシャは、現在環境にやさしい乗り物として認識されるようになってきました。世界の目がリキシャに向けられるようになると、博士は自信のビジョンにもう一つ新たな要素を付け加えたのです。

それは、リキシャドライバーだけでなく、社会の底辺に属し、不当に中傷されている人々のために社会システム全体を変えるという要素です。

具体的な手段としては、基金を設立し、運用から生じる利息を銀行に譲渡して、リキシャドライバーがリキシャを買うためのローンと、通常であれば融資を拒否されてしまう貧しい人々に向けたローンと保証に充てるという仕組みなどが考えられます。

現在、リキシャ革命を支えているのは商業銀行と国営銀行、それに保険会社ですが、この中にインド政府が含まれれば、よりおおきなインパクトを与えることができるでしょう。

最後に

リキシャドライバーがリキシャ銀行の取り組みに加わろうと決意したのは、自分のなかに現状を打開する力、人生を支配している悪循環を断ち切る力を見出したからです。

どんなに虐げられても、自分にとって、家族にとって、より良い生活を夢見ることで、彼らが変わっていくのです。

彼ら一人ひとりが、チェンジメーカーとして変革を起こしていくのです。

それではまた〜!

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