人口2億5,000万人を超えるインドネシアは、世界最大のイスラム教国として知られています。
一見するとイスラム社会なのだと思いますが、実際のインドネシア社会は多層的に文化や信仰が重なり合ってできているのです。
『文化人類学への招待』には、そんなインドネシアについての興味深い記述があります。
重層化するインドネシア社会
僕たちは他の文化や社会を見る時に、表にはっきりとあらわれている事柄をフィルターに通しながら理解していきます。
特に宗教などの信仰は、キリスト教、仏教、イスラム教などど大枠でくくることができるので、一見すると同じようなものだと思えます。
しかし、実際は国や地域によって、歴史的にさまざまな思想が重なりあって、現在の信仰を成り立たせているのです。
インドネシアは、社会が三層に重層化していると言われています。以下、『文化人類学への招待』からの引用です。
オランダの人類学者がいろいろな材料を付き合わせてみると、インドネシアの社会は三重に重層化しているということがわかったのです。なぜかというと、一番新しい宗教的な層がイスラム教だとすると、それがバリ島を飛びこして東のほうに進んでいった。だから、オランダが統治しているたいていの島の中にイスラム教が浸透して、どんな島でも海岸地帯はほぼイスラム教が一般化している。
しかし、イスラム教以前には、ヒンズー教が受容されていたわけですから、イスラム化された地域においてもヒンズー教的な要素はいくらでも残っている。これはインドネシアの演劇や音楽について典型的に言いうるわけですが、そういった形で文化の化石としてヒンズー教的な要素が一番顕著に残っているのがバリ島であることは、ご存じだと思います。
しかし、さらに一番下の層にはヒンズー教以前の文化、つまりアミニズム(自然と人間社会の断絶を認めない思考体系)を中心に形成された古層が重層している。だから今日、人類学者がインドネシアの社会を勉強するときに、どこに焦点を当てるかということによってインドネシアの社会の像が違ってくる。
インドネシアは、古層にアミニズム、その次にヒンズー教の文化、そしてそこにイスラム教文化が重なって今の社会が出来上がっているということです。インドネシアの中でも特に例外な地域がバリ島であり、バリ土着の信仰とインド仏教やヒンズー教などが組み合わさって、「バリヒンズー」とも言われています。
国や地域によって、それぞれの信仰が成り立っている
インドネシアの例をあげましたが、社会が多層的に成り立っているというのは、世界中の国や地域においても当てはまることです。
僕は詳しくありませんが、日本も、昔からの自然信仰や仏教的な価値観が複雑に絡み合って、文化ができてきたのでしょう。
日本では大きな視点で見ると、神道、仏教的な宗教観を持った人が多いらしいですが、ミクロな視点で見ると、地域によっても違いがあるだろうし、もっというと個人個人によっても違います。
さまざまな視点から物事をみてみると、意外な発見がたくさんあるのだと思います。
最後に
インドネシア社会は、アミニズム、ヒンズー、そしてイスラム教文化が重なり合ってできているようですが、ミクロな視点で見ると、もっと多くの信仰や文化が複雑に絡み合っているのでしょう。
文化や信仰の成り立ちは、非常に面白いテーマだと思うので、今後もいろいろと学んでいけたらと思います。
それではまた〜!
関連記事:健全な社会とは、多様な「精神の習慣」が存在する社会である。
スポンサーリンク