風土を知ることが、グローバル化を理解するために一番必要なことである。

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海外を旅したり、日本の地域に足を運んだりすると、その土地に暮らす人々のローカルな世界が広がっていることに気がつきます。その土地ごとの風土があり、特色があると言ってもいいでしょう。

哲学者の内山節さんの『ローカリズム原論』では、三澤勝衛の風土論について語られています。

そこでは、なぜ風土を知ることが、グローバルを理解するために必要であるのかについての理解を深めることができます。今回は、風土とグローバルについてです。

風土をどのようにとらえるか

三澤勝衛は日本の地理学者で、長野県の小中学校で教鞭をとりながら、信州の土地を対象に地理学の研究に着手し、独自の「風土論」を展開しました。

参照:在野研究のススメvol.07 : 三沢勝衛

1937年に亡くなり70年以上を経てから、著作全集が発行されるなど、今日の人々にも通じる思想を残した方です。そんな三澤勝衛が展開した独自の風土論について、内山節さんの『ローカリズム原論』では以下のように語られています。

三澤勝衛の風土論を読んでびっくりするのは、彼が風土と考える概念がすごく狭いことです。三澤にとって一番広い風土の単位は諏訪地区くらい。そこから離れると、もう自然も違うし歴史も違う。人間たちの自然との関わり方も違う。彼は風土の単位をすごく狭い範囲でとらえた人です。彼もまた自然と人間の関わり方のなかで風土を考えるというとらえ方では和辻と同じですが、和辻が東アジアモンスーン地帯に共通する風土をみたのに対して、三澤は風土はローカルな世界として形成されていると考えていました。地域が少し異なれば自然も違ってくる。自然が違えば自然と人間の関係も違ってくる。つまり自然を深く掘り下げてとらえるということは、自然と人間の関わり方を深く掘り下げてとらえることでもあるのです。

この考え方で自然や人間の関係をより深く掘り下げていくと、諏訪地区でも風土の単位は広すぎることがわかる。その結果、江戸時代の村くらいの広さで風土をみていく必要性を三澤は提唱することになるのですが、もっと掘り下げていくとそれでも広すぎて、次には集落の単位で風土が違うことをみなければいけなくなる。さらに掘り下げていくと畑一枚で風土が違うとさえ彼はいっています。

まり三澤の風土論は多層的なのです。風土はいくつもの層になって存在している。その層の差は掘り下げ方の違いから生じる。そして、自然と人間の関係をとことんつき詰めていくと、畑の真ん中に大きな岩があると右と左では風土が違ってくるというところまでいきつく。実際、農業をしているとよくあることあのですが、岩があると風の当たり方、日の当たり方の違い、その結果、こちら側は霧が出て、こちら側は出ない、ということになって、作物の生育が大きく違ってくるということはよくある。彼は、最後にそういうレベルまで掘り下げて風土をとらえていました。そうすると、風土というのは掘り下げれば掘り下げるほど狭くなる。日本をひとつの風土でくくるのでさえ問題外で、最大限でも諏訪地区くらい、彼にとって風土とはそういうものとして考えられていました。

和辻哲郎が『風土』の中で東アジアモンスーン地帯に共通する風土をみたのに対して、三澤は風土をできるだけ狭い範囲で、なおかつ多層的にとらえました。

僕たちが風土について考えると、比較的広い範囲でのことを想定しますが、とことん掘り下げて風土とらえることもできるという視点を与えてくれています。

風土を知ることこそが、グローバル化を理解するために重要なことである

そして本書では、三澤勝衛の風土に対する考え方を引用しながら、風土を見る目をもつことの重要性について語られています。以下、引用です。

自分たちの生きている風土をしっかり知る。そこにはかけがえのない、つまり他と交換ができない自然があって、かけがえのない人間の営みがあって、かけがえのない風土が形成されている。そういうものの持っている深さとか大切さがわかってくると、世界の人たちがみな同じようなかけがえのない世界で生きていることに気づく。世界の具体的なことは知らなくても、自分たちの足元の世界をしっかりとみたときに、世界もまたその自分たちの足元と同じような世界の集積体であることがわかってくるのです。

自分の生きている環境の風土を知ると、世界中のどの土地にもそれぞれの風土があることに気がつきます。ローカルな風土が多層的に集まって、それがグローバルな世界を形づくっているのです。

グローバル化が世界をフラットにするのではなく、よりローカルな風土が浮かび上がってくるのだと思います。

最後に

内山節さんが語る三澤勝衛の風土に対する考え方と、それぞれの風土を知ることの大事さについて紹介しました。

暮らす地域には、どのような歴史や自然があり、人間の営みがあったかなどというように、風土を見る目をもつことが、地域を知り、グローバルな世界を理解するためには大切なことなのでしょう。

それではまた!

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